年齢・家族構成別保険講座
120代独身の方(例)
社会人になったらそろそろ自分で保険でも加入しないといけないかな?
そう考える人も少なくありません。
ただ生命保険は20年、30年とお金を支払うことを約束する契約。毎月の保険料負担は軽くても、トータルで支払う金額は数百万円から1,000万円近くにもなります。それだけに慎重に、失敗をしないようにして加入したいですね。
20代のあなたが確保しておきたい保障は次の通りです。
1.死亡保障
20代独身のあなたがもしある日突然、亡くなるようなことがあったら・・・・・・。
多くの人たちが悲しみますよね。ご両親、ご兄弟、学生時代の友人、バイト先の知り合い、お世話になった先生方、親戚・親類等々。きっとお葬式をすると、多くの方々が駆けつけてくれるでしょう。
ではその方々の中であなたが亡くなることで経済的に困る方々はどのくらいいるでしょうか? 実は独身生活を謳歌しているあなたが亡くなっても、経済的には誰も困らないのです。もちろん寂しいし、涙は流してくれますが、別に生活ができなくなるわけではありません。ですからあなたにはさほど大きな保障は必要ないのです。
死亡保障としては500万円~1,000万円もあれば、十分です。考え方の根拠はお葬式代+αということです。
その金額をどんな保険で保障するか、基本的には3通りの方法があります。
<定期保険を利用する>
定期保険というのはいわゆる掛け捨ての保険です。保険料負担を軽くして、保障だけを確保したいと考える方に相応しい保険と言えます。最近ではネット専門の保険会社なども登場し、手頃な保険料で保障を確保できるようになってきています。
ただし、掛け捨ての保険を利用して保障をきちんと確保しなければいけないという独身の人がどのくらい存在するのかは正直言って疑問です。保険はあくまでももし万が一があった場合に、経済的に困る人がいる場合に必要なものです。逆に言えば、経済的に困る人がいない場合は、不要なのです。不要なものにもかかわらず、掛け捨ての保険で保障を確保するのはあまり賢い行動とは言えません。あくまでも保障が必要な場合にのみ、定期保険の活用を考えてみる価値が出てくるのです。
<貯蓄型の保険を利用する>
掛け捨ては嫌だという方は、貯蓄型の保険の利用を考えてみましょう。貯蓄型の保険には大きくは2種類あります。満期が決まっている「養老保険」と「終身保険」です。現在は運用環境があまり芳しくなく予定利率が低い商品もあるため慎重に検討する必要があります。満期のない、いわゆる終身保障の終身保険はライフプランに合わせてお勧めします。
終身保険は例えば払い込みは60歳で満了して、保障を一生涯継続できるといった商品です。多くの場合、払い込みが終了した段階では、払い込んだ額以上の解約返戻金が貯まっています。その解約返戻金を老後資金や教育資金に活用することも可能です。
終身の死亡保障は、いくらかは確実に持たなければいけない保障です。というのも私たちは100%の確率でいつかは死亡し、その時に多少なりともお金を残す必要があるからです。お葬式代だけでいいという方は、200~300万程度の保障が必要ですし、いつか結婚するのであればできれば500~1,000万円の終身保障は確保したいものです。であるならば、できる限り若いうちから先のことを考えて、終身保険に加入しているほうが賢い方法ということになります。
<変額タイプの保険を利用する>
終身保険は契約期間が長期になるため、将来インフレが起こって、お金の価値が変わってしまうことが懸念されます。今、500万円の保険に加入していても、40年後、50年後にはその500万円の価値がどの程度あるかは疑問ではないですか? そこでお勧めしたのが変額タイプの終身保険です。これは死亡保障に最低保障があり、かつ保険料を運用に回していて、その運用の成果によって死亡保障が増額されます。つまり物価にスライドして死亡保障が増加する可能性があるのです。このタイプですと長期間契約することによるデメリットも少なくなり、運用成果によっては解約返戻金も増加することがあるので資産運用の一面も有しています。60歳払込み満了で変額タイプの終身保険を1,000万円加入する。私たちがお勧めする独身者の保険の加入方法の一例です。
2.入院保障
独身の間は資産もあまりないため、入院などして予期せぬ出費が生じるリスクに対して保障を確保することは極めて大切です。ただし、若いうちの入院はリスクとしてはあまり高くはありません。入院するリスクはやはり老後、特に65歳以降急激に高まります。老人医療制度の将来性が危ぶまれている現代では、できる限り早いうちから一生涯の入院の保障を確保することが賢明です。払い込みは60歳、もしくは65歳で終えるようにしましょう。入院日額は5,000~10,000円。独身時代では5,000円でも十分ですが、入院した場合に個室に入りたい場合、あるいは老後の保障まで考えて加入を検討するならばやはり1万円の保障を確保しておくほうが安心です。
女性の場合は、圧倒的に妊娠関係の入院が多いので、女性医療特約を活用して女性特有の疾患の場合には、1万円の保障になるように加入する方法もあります。
3.がん保障
ガンは他の疾患に比較して圧倒的に費用がかかり、また一旦退院しても再発する危険性の高い病気です。ですからこれからは、ガン保険は必須といっても言い過ぎではないでしょう。ガン保険の基本は終身の保障が安心です。払い込みも終身の場合が多いですが、若い間に加入するのであれば、60歳とか65歳で払い込みを終える加入方法をお勧めします。
入院日額は1万円以上を確保しましょう。医療保険とあわせて日額2万円は確保しておきたいところです。
入院給付金だけでなく診断給付金も大きなポイントです。最低でも100万円の診断給付金を付加しておくとより安心です。診断給付金は診断時に給付される保険と入院した場合にのみ給付される保険とがあります。また1回だけの給付の保険と複数回給付される保険があります。どれがいい悪いではなく、自身が選んだ保険がどのような保障内容になっているかをきちんと把握しておきたいものです。
保険料は3つの保障をあわせて、支払い可能な額(例:月額1万円強)にしておきましょう。今後のライフプランの変更により、さらに保険に加入する必要が出てくる可能性もあります(学資保険の加入や死亡保障の増額など)。その場合の支払い余力を残すためにも、保険料は抑え目にしておきたいところです。したがって、特定の保険会社1社だけの話を聞くのではなく、保険料の比較をしてできる限り保険料負担の軽い保険会社を選択するのも方法でしょう。
女性の場合は、1万円未満に抑えておくことをお勧めします。結婚しても仕事を継続するのであれば、男性と同じ考えで問題はないのですが、一時的にでも専業主婦を考えているのであれば、保険料が家計を圧迫する可能性も出てきます。1万円未満であれば解約することなく、保険を継続できるのではないでしょうか。
最近では入院期間が短縮されてきているので、入院給付金はなしにして、診断給付金だけを給付するがん保険も登場してきています。治療方法の変化によって保険内容も変化してきています。
まとめ
- 死亡保障:500~1,000万円、60~65歳払込満了の終身保険がお勧め
- 入院保障:60~65歳払込満了の終身医療保険がお勧め。日額は5,000~10,000円
- ガン保障:60~65歳払込満了の終身ガン保険がお勧め。日額は1万円以上。
診断給付金は100万円以上あったほうがいい - 保険料は月額1万円前後に、専業主婦希望の方は1万円未満に抑えること!
2新婚のあなたには…(例)
結婚おめでとうございます!
これからあなたはいつも二人三脚で歩き続けることになります。当然守るべき人ができたわけです。ですから保障も先のことまで考えてきちんと確保して欲しいです。
新婚のあなたがまず考えないといけないことは、子どもを持つかどうかということです。
子どもがまだいないあなたには・・・
新婚の間は、独身時代に加入した終身保険、終身医療保険等をそのまま継続しておいてまったく問題ありません。死亡保障は500~1,000万円あれば十分です。これは葬儀代ならびにパートナーの再出発資金と考えてください。
DINKS志望の方は、生涯大きな死亡保障は必要ありません。必要なのは将来の住宅購入資金や老後資金のための積立です。特に老後資金は積立期間を長く設定できるので、保険での準備に大きなメリットがあります。年金保険、変額年金保険、終身保険などを活用して、将来のための積立を始めましょう。
奥様のお腹の中に子どもが宿った瞬間に保障を大きくする必要が出てきます。その子を守る必要があるからです。
親としての自覚。子どもが生まれたら考えたい保障
適正な死亡保障額はその方のライフプランや考え方などによって大幅に変わります。ここではひとつの考え方をご紹介しますが、これがあなたに当てはまるかどうかはわかりません。適正な保障額を算出することは極めて重要なので、信頼のおけるファイナンシャルプランナーにご相談されることをお勧めします。
【死亡保険】残された家族の生活費の不足分として、3,000万円を目安に
残された家族の生活に必要なお金(支出)のうち、収入や貯蓄では足りない分が、必要な保障金額になります。具体的な必要保障額を見てみると、以下の例では2,979万円となります。
夫:30歳会社員、妻:28歳、子ども:0歳の場合の具体例
(A) 残された家族の支出(単位:万円)
死亡整理金 | 葬儀費用など | 500 | |
---|---|---|---|
教育費 | すべて公立の学校に通った場合の目安 | 1,037 | |
住居費 | 子どもが独立するまで | 10万円(月額)×22年 | 2,640 |
子どもが独立後、奥さまが亡くなるまで※ | 10万円(月額)×37年×60% | 2,664 | |
生活費 | 子どもが独立するまで | 17万円(月額)×22年×80% | 3,590 |
子どもが独立後、奥さまが亡くなるまで※ | 17万円(月額)×37年×60% | 4,529 | |
合計 | 14,960 |
※配偶者(妻)が87歳まで生存したとして計算しています。
(B) 残された家族の収入、貯蓄(単位:万円)
貯蓄 | – | 400 | |
---|---|---|---|
家族の収入 | 60歳までの奥さまの収入(手取り額) | 10.4万円(月額)×32年 | 3,993 |
死亡退職金など | – | 300 | |
遺族年金など | 遺族基礎年金、遺族厚生年金、老齢年金の概算※ | 7,288 | |
合計 | 11,981 |
※配偶者(妻)が87歳まで生存したとして計算しています。
※本記載は、社会保障制度の概要を説明したものです。詳細につきましては、所轄の年金事務所等にご相談ください。
必要保障額:(A)-(B)=2,979万円
トータルでかかる教育資金の目安(概算)
進学 コース |
幼稚園 | 小学校 (6年分) |
中学校 (3年分) |
高校 (3年分・ 全日制) |
大学 (4年分) |
総額 |
---|---|---|---|---|---|---|
すべて 公立 |
64万円 ※2年間の場合 |
192万円 | 146万円 | 137万円 | 516万円 | 約1055万円 |
すべて 私立 |
158万円 ※3年間の場合 |
959万円 | 421万円 | 290万円 | 820万円 | 約2648万円 |
出典:文部科学省「子供の学習費調査」(平成30年度)
3専業主婦(主夫)のあなたに確保して欲しい保障(例)
ここでは専業主婦(夫)の場合をお話しましょう(共稼ぎの場合は⇒ [4] へ)。
専業主婦(夫)のあなたがまず確保しなければいけない保障は入院保障です。配偶者の年齢が60歳か65歳には払い込みを終えるようにして(自身の年齢で計算するのは間違いです)、終身保障の医療保険にできる限り早いうちに加入しておいたほうがいいでしょう。
日額は1万円がお勧めですが、保険料を抑えたい場合は、女性医療特約を付加して主契約と特約合算で日額1万円をキープすればいいでしょう。
死亡保障は終身保険で200~300万円程度を目安にしましょう。これはいずれやってくる死亡時に家族に残すお金です。問題は若くして亡くなった場合です。例えば、お子さんが小さい段階で急逝してしまうと、残された配偶者は小さな子どもを抱えて生活が大変になってしまいます。せめて子どもたちが高校生くらいになるまではそこそこのお金を残したいものです。例えば、月額5万円残してあげるとすると、5×12=年間60万円、15年間とすると900万円の保障が必要ということになります。この900万円の保障は一時金で貰う必要はありません。先述の通り月々5万円というように毎月定額での給付で十分です。収入保障保険、家族収入保険といった名称で販売されているこの保険は、一時金で保険金をもらう保険よりも保険料が随分と安いため、専業主婦(夫)にはうってつけの保険です。
がんの保障も確保しておきたいところです。20代でもがんなどに罹患し、命を落とす人もいます。女性では子宮がんや乳がんに罹患する人は本当に多いので、できる限り早めにがん保険を準備しておくことが望まれます。
基本は終身保障がいいのですが、保険料を抑えるために、10年間だけの保障を選択する手もあります。将来的には終身の保障が必要ですが、10年間だけの定期タイプでも構いませんので、とにかくがんに対する保障は確保してください。
4共働きのご家庭の場合の保険は違う!(例)
共働きのご家庭では、配偶者が亡くなった場合にもご自身が働き続けるのであれば、配偶者に大きな死亡保障は必要ないのです。
例えば、サラリーマンの夫が亡くなると妻に遺族年金が給付されます。この金額は子どもの人数と夫の所得によって変動しますが、子ども1人の場合、おおよそ月額13万円強、2人の場合月額15万円強が給付されます(参考/遺族年金※本記載は、社会保障制度の概要を説明したものです。詳細につきましては、所轄の年金事務所等にご相談ください)。
この遺族年金は妻の年収が850万円を超えない限り給付されますので、ほとんどの場合遺族年金を受取ることが可能です。
つまり妻は遺族年金を15万円ほど受け取り、さらに自身の給料を受取り、その上に夫が住宅ローンを持っていた場合には、団体信用生命によってそのローン返済は清算されます。教育費に関しても母子家庭ということで、優遇されることもあります。したがって、夫が亡くなっても働く妻は実は経済的にはさほど困りはしないのです。
反対に働く妻を亡くした場合の夫は生活が厳しくなります。住宅ローンを夫名義で借入していると、妻が亡くなっても免除されません。妻が働くことを前提に購入していた住宅は、その返済が苦しくなるなんてこともよくある話です。にもかかわらず妻の保険金額は数百万円などというご家庭をよく見かけます。
保険を選択する場合には、関係する制度のことも十分に知ったうえで、保険に加入したいものです。
5家を購入したら、保障はどうすればいい?(例)
「住宅を購入したから、死亡保障を大きく持たなければ」
そうお考えの方が結構多いようです。しかしそれは間違いです。
住宅を購入した場合、多くは住宅ローンを組みますが、ローンにはほとんどの場合、団体信用生命が付帯されています。これは借入人が死亡した場合に、金融機関が貸付金額の回収ができなくならないように、ローン残額分の保険金が金融機関に支払われるものです。
つまり、ローンが残っている住宅に住んでいる場合、借入人が亡くなっても住宅は残されるのです。ですから、死亡保障を大きくするのではなく、逆にローン分死亡保障を小さくしてもいいのです。
ただし、がんなどの大病になった場合に、ローン返済が滞る危険性は残ります。したがって、ローンを組んだ場合、返済分を考慮に入れて入院保障などは大きくしておくほうが安全です。最近ではがん等に罹患したら返済が免除されるという特約がついたローンなどもあります(その分、返済金利が0.1~0.2%ほど高くなっている場合もある)ので、心配な方はそのようなローンを選択してもいいかもしれません。
6子どもが独立したら(例)
子どもたちの教育が終わると家計はぐっと楽になります。教育資金用に加入しておいた掛け捨ての死亡保障はもはやお役目御免。保障額を引き下げても問題ありません。子どもの教育が終了したのに、何年も数千万円の死亡保障を継続している方をよく見かけますが、必要のない保障に保険料を支払うのはもったいないことです。同じ保険料を支払うのであれば、必要な保障に対して支払いたいものです。子どもが独立をしたら、保険の点検、見直しをしたほうが賢明です。
必要な保障については、7.定年退職間近での見直し欄を参照してください。
7定年退職間近での見直し(例)
定年を間近に控えたあなたはぜひ保険を点検して、必要な保障が確保されているのか、そして不要な保障を保有していないのかを確認してください。
入院保障の確保
まず確保したいのは、終身の入院保障です。今後、高齢者医療制度がどのように変化していくかはわかりません。安心して医療が受けられるように一生涯の入院保障をできる限り早めに確保しておきたいものです。給付日額はできれば1万円は欲しいところです。
共済や団体保険、グループ保険で入院保障を確保されている方は、その保障をいつまで継続できるのかをぜひ確認してください。基本的には終身の保障でありません。ですからグループ保険などは現役時代のもので、定年を間近に控えたあなたにはもはや見直しが必要なこともあります。
保険料の払い込みはできれば65歳とか70歳で終わらせたいものです。しかし保険料が高すぎて加入が難しい場合は、終身払い込みの保険を選択してまずは、終身の入院保障を確保してください。
がんに対する保障
がん保険は加入していますか?
一旦がんになると、治療費等に莫大な費用を要します。今の時代、がん保険は必需品です。保障額は入院日額1万円、診断給付金100万円がひとつの目処となります。入院保険とあわせると1日2万円の給付となり、これだけの保障をひとつの目安とし確保すれば治療に専念できると考えられます。
最近では入院期間が短縮されてきているので、入院給付金はなしにして、診断給付金だけを給付するがん保険も登場してきています。治療方法の変化によって保険内容も変化してきています。
死亡保障
死亡保障はもうあまり多くは必要ありません。しかしゼロも困ります。というのもあなたが亡くなった場合には、誰かがお葬式等をしてくれるでしょうし、お墓の準備をしていなければお墓も買わなければいけません。
一般的に夫に先立たれた妻はその後平均的に10年前後「おひとりさま」の時代を迎えます。奥様の1人の期間を守ってあげるだけの資金を残されていますか? もし残さずにあなたが先に亡くなると、奥様の生活は子どもたちが守ることになります。その余裕が子どもたちにはあるでしょうか? もし余裕がなさそうであれば、やはりあなたが奥様を守ってあげなければいけません。つまりあなたが亡くなった場合に、それなりのお金を残してあげる必要があるのです。
私たちは終身保険で死亡保障をできれば1,000万円は確保しくださいといつもお伝えしています。1,000万円あれば、お葬式等で300~400万円使ったとしても600~700万円の資金を残すことができます。
遺族年金が10万円前後給付されますが、それだけのお金で生活を続けることは厳しいと思います。そこでご主人の保険で給付された保険金を取り崩しながら「おひとりさま」の生活を続ければ、介護状態などにならない限り子どもたちに資金的な援助を受ける必要はありません。
終身保険は月払い、年払いだけでなく、一時払いでの加入も可能です。退職金の一部を終身保険に変更しておくことも検討してみてはいかがでしょうか。この場合の考え方は、ご主人に保険をかけて奥様の老後資金の準備をするということになります。
8セカンドライフに必要な保障は(例)
ご主人に必要な保障は7.定年退職間近での見直し欄を参照してください。ここでは主に奥様の保障について考えてみたいと思います。
基本的にはご主人が確保したい保障と同じです。つまり、(1)終身の入院保障、(2)終身のがん保障、(3)終身の死亡保障です。死亡保障に関しては夫には1,000万円確保してくださいとご案内しましたが、妻の場合はお葬式代+α、つまり200~300万円程度で問題ないと思います。
これ以外にぜひ検討していただきたいのが、介護に対する保障です。
あなたが介護状態に陥った場合に、それなりの資金を残しておかなければ、子どもたちが苦労することになります。何らかの手助けはしてもらえても、資金的な援助まで受けたくないというのが多くの方々の考えることではないでしょうか。そう考えると介護状態になった場合に給付金が支給される民間の介護保険は、これからは極めて重要な保障といえます。
介護状態になった場合に月額で5万円~10万円の給付が、一生涯続く介護保険の加入を加入の目安としてください。このような保障は男性にも確保していただきたい保障ですが、介護になる可能性は平均寿命が長い分、女性のほうが圧倒的に高いのです。ですから女性の方は健康な間に介護対策をご検討ください。
9生涯独身を決めたあなたには(例)
生涯独身を決めたあなたが確保しなければいけない保障は次の通りです。
入院保障
一生涯の入院保障をできる限り早めに確保しましょう。入院日額はできれば1万円は欲しいところです。払い込みは60歳で終えるようにしましょう。
がん保障
一生涯のがん保障をできる限り早めに確保しましょう。入院日額は1万円、診断給付金が100万円は給付されるがん保険を選択しましょう。女性の場合、乳がんに罹患すると乳房摘出術という方法で対処する場合があります。その場合乳房再建術という手術や補正下着で対応します。どのような対処をしようとも費用がかなりかかってしまいます。入院日数が短くても費用はかかるのです。その費用の捻出を診断給付金で行うわけです。
あるいは放射線治療を施し、その影響で髪の毛が抜けてしまうことがあります。そのような場合にはカツラを着用したりするのですが、そのカツラがかなり高額になります。治療費ではありませんが、がんの場合にはこのような諸々の費用が馬鹿にならないのです。
保険料の払い込みは60歳で終えるようにしましょう。セカンドライフに入ってからの出費はできる限り抑えた方が賢明です。
最近では入院期間が短縮されてきているので、入院給付金はなしにして、診断給付金だけを給付するがん保険も登場してきています。治療方法の変化によって保険内容も変化してきています。
介護保障
ぜひ確保して欲しいのが、介護に対する保障です。ご自身が介護状態なることは、死ぬことやがんになること以上にイメージはしづらいものです。しかしそのリスクは確実にあります。介護状態になった場合に5~10万円の給付が生涯にわたって支給されるような介護保障を確保できれば安心です。
老後の生活保障
おひとりさまを決めたあなたが最も心配なのは、セカンドライフの生活資金だと思います。月額で20~30万円の生活資金は確保したいのではないでしょうか? 公的年金での受給額との差額は自身で準備することになります。例えば生活費月額25万、老齢年金月額15万円とすると毎月10万円が必要です。年間120万円となります。20年生きると2,400万円、30年生きると3,600万円が必要になります。
もちろん老後にも資産運用を行うので、その全額を退職時に準備しておく必要はないのですが、準備しておいたほうが安全であることは間違いありません。退職金が1,000万円あるとすると差額は2,600万円。それだけの資金は急に貯めることはできませんので、計画的に準備することが望まれます。老後資金の準備には年金保険や終身保険などの保障と貯蓄ができる保険を利用すると安全で確実です。多少リスクがあってもできる限り資金を増やしたい場合には、変額年金保険や変額保険型を利用したり、投資信託を始めとした運用商品で準備すればいいでしょう。変額保険や運用商品にはリスクが伴うため、正しい知識を習得してから購入したいものです。
10自営業の方は(例)
自営業であるあなたの場合、サラリーマンの方々とは保障に対する考え方は全く異なります。なぜならばサラリーマンのように厚生年金や共済年金に加入しておらず、万が一になった場合の遺族年金がかなり少ないのです。また、遺族基礎年金は子のいる配偶者にしか給付されません。子供というのは18歳の年度末までをいうので、自営業の場合、末子が18歳になった時点での配偶者の年齢を確認する必要があります。例えば、それが50歳であるならば、一切の給付を受けることなく生活しなければいけないことになります。そのいわば空白期間分の保障額までを加味して、全体の保障額を決定しなければいけません。遺族基礎年金は子どもの人数によって異なりますが、月額8~10万円前後です。15年分とすると1,440~1,800万円は最低でも死亡保障をサラリーマンよりは多めに確保する必要があります。
入院に対する保障の確保の仕方は、サラリーマンとはまったく異なります。サラリーマンの場合、入院しても給料がすぐになくなるわけではありません。多くの場合、有給休暇が30~40日程度あるので、その期間は給料は減額されません(残業代はなくなりますが)。入院が長期化して、給料がなくなったとしても健康保険から「傷病手当金」が最長1年半まで給付されます。しかし、自営業者の場合は入院すると、その段階で収入が途絶えてしまう可能性があります。したがって、サラリーマンよりも多く入院に対する保障を確保しなくてはいけません。この場合の考え方は(1)治療費に対する保障、(2)生活費に対する保障の2つに分けて考えると、理解しやすいと思います。
(1) 治療費に対する保障については、損害保険会社が扱っている実損填補型の医療保険がお勧めです。これは健康保険の自己負担分(医療費の3割)と個室代(上限規制あり)を補填してくる保険です。補償期間は10年で、10年ごとに掛け金が若干上がっていってしまいますが、特に治療が長引く病気(例えば、がんや急性心筋梗塞、脳卒中など)の場合、できれば個室は確保したいものですし、高額療養費の制度があるとはいうものの、社会保障が薄い自営業者にとっては負担した治療費を全額補償(上限あり)してくれるのはかなり心強いものです。入院費の心配することなく、治療に専念できるので実損填補型の医療保険はぜひ検討してみてください。
(2) 生活費に対する保障は、一般の医療保険で確保します。医療保険の場合、まず考えなければいけないのは「保障の期間」と「保障の日額」の2点です。「保障の期間」は一生涯=終身をお勧めします。「保障の日額」は収入に応じて設定します。月に30万円は生活費が必要ならば、日額は1万円は必要ですし、45万円の生活費が必要ならば、日額は1万5000円を確保します。次に何日の入院まで保障してくれるかを考えます。基本的に30日型とか45日型といった短期間しか保障してくれない保険のほうが保険料は安いです。しかし、がんや急性心筋梗塞、脳卒中といった重大疾患に罹患してしまうと入院期間がその日数を超えてしまうことが少なからずあります。保険料は重要な要素ですが、どんなに安くてもいざという時に助けにならない保険では加入している意味はありません。最近は一般の病気は30~60日、重大疾患は無制限で給付をしてくれるといった医療保険も開発されています。そのように工夫されている医療保険の方が安心感はあることは間違いのない事実だと思います。
最後に考えなければいけないポイントは保険料の支払い期間です。お勧めは60~70歳で払い込みは満了するけれども、保障は終身継続するといったものです。現役の間だけ保険料を支払い、現役を退くと保険料は支払わないけれど、保障は継続するといった考え方です。ただし、その分保険料が高くなります。保険料を安く抑えたいという方は、支払い期間も終身に設定すると、毎月の保険料は安くなります。
確保したい保障や保障額はそれぞれの方の生活によって異なるので、あなたに相応しい保障は信頼のおけるファイナンシャルプランナーにご相談してください。
11ドクターであるあなたの場合
1.開業医(法人化していない場合)
開業医のあなたの場合、所得は一般の方々に比較して高いのですが、その分生活水準も高く、死亡時や働けなくなった場合のリスクは、一般の方々よりもかなり大きいといわざるを得ません。したがって、保障に対しての考え方を正しく勉強し、確保しておくことが重要です。中には国民年金、国民健康保険だけといった医師も少なくありません。国民年金、国民健康保険の場合、死亡時や傷病の際の保障が小さく、そのような事態に陥った場合、適切な保障を確保しておかないと家族を守ることができなくなってしまいます。
保障額には借入金に対する保障も考慮に入れておかなければいけません。多くの医師は開業時や機材等の購入費として多額の借入金をお持ちです。これらの借入金は住宅ローンと違い、万が一があっても「団体信用生命」によって清算されるといったことにはなりません。「借金」として、遺族が「相続」することになるのです。あるいは働けなくなった場合には、生活費以外に、これらの返済金も重くのしかかってきます。ですので、一般の方々よりもより慎重に保障の確保を検討しなければいけません。
例)40歳医師、妻35歳、子供5歳の具体例(住宅未購入)
(A) 残された家族の支出(単位:万円)
死亡整理金 | 葬儀費用等 | 500 | |
---|---|---|---|
教育費 | すべて私立の学校に通った場合の目安 | 2,600 | |
住居費 | 子供が独立するまで | 10万円(月額)×17年 | 2,040 |
子供が独立後、妻が亡くなるまで※ | 10万円(月額)×35年 | 2,520 | |
生活費 | 子供が独立(22歳)するまで | 30万円(月額)×17年×80% | 4,896 |
子供が独立後、妻が亡くなるまで※ | 30万円(月額)×35年×60% | 7,560 | |
合計 | 20,116 |
※妻が88歳まで生存し、現在の住居に積み続けることで計算しています。
(B) 残された家族の収入、貯蓄(単位:万円)
貯蓄 | – | 1,000 |
---|---|---|
遺族年金など | 遺族基礎年金、老齢年金の概算 | 3,518 |
合計 | 3,918 |
※妻は87歳まで生存したものとして計算しています。
※本記載は、社会保障制度の概要を説明したものです。詳細につきましては、所轄の年金事務所等にご相談ください。
必要保障額:(A)-(B)=16,198万円
遺族基礎年金だけですと、残された家族の収入が少なく、1億円強の保障が必要な場合も少なくありません。借入をされている場合には、この金額に借入相当額を上乗せしたので、2億円を超える保障額の保険に加入していても多すぎるということもないようです。
老齢基礎年金も少ないため、老後の生活費を若い段階から意識して積み立てておかなければセカンドライフに入ってから苦労することになります。今後のインフレリスクを考えると、老後資金については「変額年金保険」などで資金準備をすることをお勧めします。あるいは保障を確保するために、変額タイプの終身保険に加入しておくのも手です。基本的には万が一があった場合に、家族を守るために保険ですが、保険料の支払いが完了した時点には、運用成果に応じた解約返戻金が貯まっているので、セカンドライフ用の資金準備にもつながっています。開業医の方々が死亡保障額1億円とか2億円といった終身保険に加入している事例をよく見かけますが、それはそのような目的のためです。詳細はファイナンシャルプランナーにご相談することをお勧めします。
2.開業医(法人化している場合)
開業医の場合も、法人化されている場合は、法人化されていない場合とは随分と話が変わります。まず、公的制度として厚生年金にも加入されているので、国民年金に比較すると保障額は随分と多くなっています。したがって、同じ開業医でも法人化されていない医師よりも必要な保障額は少なくてもいいことが多いです。もちろん必要な保障額はそれぞれの方で異なりますので、専門知識を持ったファイナンシャルプランナーに相談をして適切な保障額を確保するようにしてください。
法人で借入があり、それを個人保証している場合には、法人契約(契約者・受取人/医療法人、被保険者/医師)で死亡保障を確保する必要があります。法人契約での保険加入は、保険料の全額や一部が経費で認められ、損金扱いすることが可能です(終身保険は資産計上されます)。
法人で準備する保障額については、定期保険で準備する場合、借入金のおおよそ2倍を目処としてください。例えば、借入金が1億円あると、2億円の保険金額の保険に加入するのです。というのも医療法人が受け取った保険金額はその多くが益金となってしまうため、税金が発生しています可能性があるのです。仮に35%の税金を納めると、医療法人が使える金額は保険金額の65%。2億円の保険では1億3000万円が手許に残ることになります。したがって、借入金額の2倍がひとつの目処となるのです。
法人から遺族に給付される「死亡退職金」はあまり高額でない限り損金で認められます。前述の事例では3000万円の死亡退職金を遺族に給付し、残りの保険金額1億7000万円を益金に計上。その金額の65%(1億1050万円)が手許資金として残り、借入金の返済に充てることになります。このように法人で加入する場合には、借入額や法人化されてからの年数などを加味して保障額を決定する必要があります。
医師の方々がわざわざ借入を起こしてまでも医療法人を設立する一番のメリットは、税金面での優遇を期待してのことだと思われます。個人経営で収入が多大になると税金が膨れ上がり、税金を支払うために働いているという感覚になる方が少なくありません。その点、法人化しておくと税制面で様々なメリットを享受できるのです。
また、気づいていらっしゃらない医師も少なくないのですが、法人化するもうひとつの大きなメリットが、退職の際に医療法人から「役員退職金」を受け取ることができるということです。「役員退職金」は退職金控除があるので、毎年支払う所得税や住民税よりも納税額が少額ですむことが多くなっています。退職金を受け取るためには資金的な準備が必要となります。理事長が退職金を受け取ったら、資金が枯渇してしまい、その後医療法人を継続することができないなんてことがあれば、折角の法人化が台無しになってしまう可能性もあります。そこで医療法人を設立されたら、できる限り早い段階で退任時のことをイメージして、役員退職金の資金準備に着手することをお勧めします。
法人化をすると、契約者を法人として退職金の準備ができるのです。その方法として活用されるのが保険会社が取り扱っている「長期平準定期保険」です。「長期平準定期保険」は保険期間が90歳とか100歳といったように極めて長く、本来は掛け捨てのはずの定期保険にもかかわらず解約返戻金が貯まっている期間が長く継続するという定期保険です。この解約返戻金を使って、退職金に充当するのです。保障を確保しながら、退職金の準備も行えるので、ぜひ検討したい方法のひとつです。
もうひとつ確保しておきたい保障が、「三大疾病対策」、中でも「がん対策」です。理事長である医師が重大疾患に罹患して働くことができなくなったら、経営に大きな支障を与えるだけでなく、家族を守ることもできなくなってしまいます。そこで「三大疾病保険(保険会社によっては、生前定期保険といった名称で販売されていることもあります)などや「がん保険」に加入して、それらのリスクにヘッジするのです。
三大疾病保険は、がん、急性心筋梗塞、脳卒中に罹患した場合に、法人に対して保険金が給付されるものです。それらの病気になると、短くても数ヶ月、長い場合は、数年間は働けなくなる可能性もあります。それらを鑑みて、いくらの資金があれば当面の医療経営に支障が出ないかをよく計算に入れて準備します。
がん保険はガンだけを保障の対象にした保険です。保障は、診断給付金と入院給付金、そして手術給付金が主な内容です。個人で加入した場合には、そのすべてを個人が受け取ることになるので、治療費の補助等に利用できます。法人で加入した場合には、給付金は法人に支払われるので、基本的には「売り上げ」と同様の扱いになります。医師が働けない分の売り上げの確保が主な目的となります。
ですのでこの「三大疾病保険」と「がん保険」は、開業医には必要不可欠な保障だと思いますので、信頼のおけるファイナンシャルプランナーにご相談ください。
3.勤務医の場合
勤務医のあなたの場合、まず確認しなければいけないことは、厚生年金に加入しているかどうかです。厚生年金に加入している方は、万が一の場合の遺族年金がサラリーマンと同様に受けることができます。国民年金の場合は、遺族基礎年金だけでは保障が十分ではないので、その分を考慮して自分自身で保障を確保する必要があります。
セカンドライフ用の資金についても、退職金が多く望めない場合、自分自身で必要な金額を準備しておく必要があります。その場合はインフレ対応を考えて金融商品を選択するようにしましょう。
このように勤務医は激務であり、責任も重く、なかなか大変な仕事なのですが、マネープランについては無頓着な方が少なくないようです。所得が一般の方よりも多いので、どうしてもそうなりがちなのですが、ライフプランをよく考えて、マネープランも綿密に組んだほうがより資金の効率利用につながります。どのような保障を確保するのか、どのような保険に加入するのは、さらには将来的に必要な資金(教育資金、住宅資金、老後資金等)をどのように準備していくのがいいのか、幅広く検討しなければいけませんので、知識のある信頼のおけるファイナンシャルプランナーを一日も早く見つけることが得策です。
12会社経営者であるあなたの場合
1.社長個人を守る保険
会社経営者の方の中でたまに「保険は法人で加入しているので(個人では)必要ない」と仰る方がいらっしゃいます。それは大いなる間違いです。法人契約はあくまでも会社を守るために加入するものであり、したがって社長の遺族よりも会社や社員が守られることが優先されます。したがって、社長個人としても家族を守る保障を確保しておく必要があります。
死亡保障額はそれぞれの方の生活水準や家族構成、ライフプランによって異なります。信頼の置けるファイナンシャルプランナーに相談することをお勧めします。
確保したい保障は次の通りです。
- 死亡保障
- 遺族の生活保障、こどもの教育資金、住宅資金、祭儀費用等
- 入院保障
- 本人の入院時の保障(入院費の補填)
- がん保障
- 本人ががんに罹患した際の保障(入院費の補填、生活費の保障)
- 三大疾病保障
- がん、急性心筋梗塞、脳卒中に対する保障(同上)
※その他、必要に応じて、教育資金の積立や老後資金の積立、インフレ対策等が必要です。
2.会社を守る保険
多くの企業の経営者は、会社の借入金の個人保証をしています。法人が借入金の返済ができなくなった場合に、社長が「自己破産」するのはそのためです。経営者に万が一があった場合にもその借入金は清算されません。したがって、経営者に万一があり法人が借入金の返済ができずに倒産してしまった場合その借入金の残高は社長の個人債務として「相続」の対象となってしまいます。そのマイナスの財産だけを「相続放棄」し、プラスの財産だけを受け取るということはできませんので、基本的には借入金の返済までを考慮に入れて「保障額」を決定しておかなければ、家族を守ることができなくなってしまいます。そこで経営者は「個人」で契約している保険とは別個に、「法人契約」で死亡保障を確保する必要があるのです。
法人で準備する保障額については、定期保険で準備する場合、借入金のおおよそ2倍を目処としてください。例えば、借入金が1億円あると、2億円の保険金額の保険に加入するのです。というのも医療法人が受け取った保険金額はその多くが益金となってしまうため、税金が発生しています可能性があるのです。仮に35%の税金を納めると、医療法人が使える金額は保険金額の65%。2億円の保険では1億3000万円が手許に残ることになります。したがって、借入金額の2倍がひとつの目処となるのです。
法人から遺族に給付される「死亡退職金」はあまり高額でない限り損金で認められます。前述の事例では3000万円の死亡退職金を遺族に給付し、残りの保険金額1億7000万円を益金に計上。その金額の65%(1億1050万円)が手許資金として残り、借入金の返済に充てることになります。このように法人で加入する場合には、借入額や法人化されてからの年数などを加味して、保障額を決定する必要があります。
個人経営ではなく法人化するもうひとつの大きなメリットが、退職の際に法人から「役員退職金」を受け取ることができるということです。「役員退職金」は退職金控除があるので、税制上のメリットが享受できます。もちろん資金的な準備をしておかなければ、退職金を受け取ることはできません。社長が退職の際に退職金を受け取ったら会社の資金が枯渇してしまいその後会社経営を継続することができないなんてことがあれば、折角の法人化が台無しになってしまう可能性もあります。そこで会社を設立されたら、できる限り早い段階で退任時のことをイメージして、役員退職金の資金準備に着手することをお勧めします。
法人化をすると、契約者を法人として退職金の準備ができるのです。その方法として活用されるのが保険会社が取り扱っている「長期平準定期保険」です。「長期平準定期保険」は保険期間が90歳や100歳といったように極めて長く、本来は掛け捨てのはずの定期保険にもかかわらず解約返戻金が貯まっている期間が長く継続するという保険です。この解約返戻金を使って、退職金に充当するのです。保障を確保しながら退職金の準備も行えるので、ぜひ検討したい方法のひとつです。
<保険金の取り扱い>
契約形態 | 契約者:法人、被保険者:役員・従業員、死亡保険金受取人:法人 |
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もうひとつ確保しておきたい保障が「三大疾病対策」、中でも「がん対策」です。社長が重大疾患に罹患して働くことができなくなったら、経営に大きな支障を与えるだけでなく、家族を守ることもできなくなってしまいます。そこで「三大疾病保険」(保険会社によっては、生前定期保険といった名称で販売されていることもあります)などや「がん保険」に加入して、それらのリスクにヘッジするのです。
三大疾病保険は、がん、急性心筋梗塞、脳卒中に罹患した場合に、法人に対して保険金が給付されるものです。それらの病気になると、短くても数ヶ月、長い場合は数年間は働けなくなる可能性もあります。それらを鑑みて、いくらの資金があれば当面の経営に支障が出ないかをよく計算に入れて準備します。
がん保険はガンだけを保障の対象にした保険です。保障は、診断給付金と入院給付金、そして手術給付金が主な内容です。個人で加入した場合には、そのすべてを個人が受け取ることになるので治療費の補助等に利用できます。法人で加入した場合には、給付金は法人に支払われるので基本的には「売り上げ」と同様の扱いになります。社長が働けない分の売り上げの確保が主な目的となります。
また、法人契約は保険料が損金で処理できる場合があります。また、解約返戻金を将来的には退職金の一部に利用することができます。
社長の在任が長くなると問題になってくるのが、「事業承継」です。たとえば、土地を始めたとした不動産を多く保有していたりすると、株価が思いのほか高くなったりしていると代替わりをするにしても、株式の譲渡がしづらくなってしまいます。
もちろん経営だけを新社長に委ねて、会社の所有は創業社長が持ち続けるといったことが可能ではありますが、その場合は創業者に万が一があった場合に、株式を社長だけでなく他の親族にも保有してもらわざる得なくなったりもして、経営が極めて不自由になってしまいます。そこで10年近い時間をかけながら、徐々に株式譲渡をしたり、少なくとも株価が上昇しないように様々な措置を講じておくほうが賢明です。そんな際に利用できるのが、法人契約の生命保険です。財務諸表上は資産計上が少なくとも、いわば簿外資産として保険会社に資金をプールしておけば、その資金を活用して事業承継に利用できたりするのです。企業の「事業承継」に関しては、(法人税ではなく)資産税を専門とした税理士や経験豊かなファイナンシャルプランナーのアドバイスを受けることが最も効果的なようです。